2016年10月末いよいよ施行される大阪市の特区民泊の条例。
10月12日から条例や申請方法についての説明会を開催されていました。私も説明会に参加して特区民泊の条例内容と申請方法について確認してきました。大阪市では違法民泊の通報窓口も開設することを発表しており、今後ますます規制が厳しくなってくる民泊。できれば、ご自身のお部屋も民泊の許可を得たいと考えている方も多いのではないでしょうか。
非常に分かりにくい条文ですが、申請にあたってのポイントなどをできるだけわかりやすく説明していきたいと思います。
また、条文に遵守するどのような運用が必要なのかなど確認してきた内容を掲載させていただきたいと思います。
特区民泊を申請し許可をもらうには、大きく3点のポイントがあります。
- 事前の確認事項
- 申請可能なエリアで、民泊として利用を建物所有者や管理組合が許可していることなど大前提の確認
- 設備に関しての条件
- 居室25㎡以上、台所、便所や換気、採光に関する規定
- 運用に関しての条件
- ゴミ処理方法や、苦情受付窓口の設置など運用に関する規定
これら3つのポイントについて条件を満たしていけば、申請するための要件をみてしていることになりますので、それぞれの項目について詳しく説明していきます。
事前の確認事項
特区民泊の申請可能なエリアの確認
まずは大前提となるのが、特区民泊には対応するエリアが決まっています。このエリア外でしたら申請できないため、まずはこれから申請を考えられているお部屋の所在地が対応するエリアかどうかの確認が必要です。
民泊施設が多い、大阪市の中央区や浪速区、西区、北区などではほとんどがのエリアが実施可能なエリアなります。
もう少し詳しく説明すると、実施可能なエリアは対象のお部屋の所在地の用途地域によって決まっています。
実施可能な用途地域は下記の地域となります。
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工場地域
- 第一種住居地域(3,000㎡以下の建物のみOK)
用途地域の確認方法は「マップナビおおさか」で確認いただくことができます。
賃貸借契約書に「民泊許可する」旨の記載が必要
賃貸物件で特区民泊を申請する場合、賃貸借契約書に「民泊を許可する」旨の記載が必要となるということです。
すでに賃貸している場合は、ほとんどの場合、記載がないかと思いますので、賃貸借契約書に民泊として利用を承諾する旨を追記する必要があるということになります。
また、転貸で借りる場合は、転貸者との契約書と、所有者と転貸者との間の賃貸借契約書にも同様に民泊として利用する旨の承諾の記載が必要になるとのことです。
区分所有の場合は?
賃貸借ではなく区分所有されている場合は、管理規約に「民泊等の営業に供することに支障がない」旨の記載が必要ですが、これもほとんどの管理組合の規定にそのような規約は定められていないかと思います。
その場合は、管理組合に「民泊利用の確認書」を作成し捺印してもらうことでもよいとのことです。
戸建てなど建物全体を所有している場合は?
戸建て所有の場合は、一番申請しやすいかと思います。
その建物を所有していることを証明する登記事項証明書などを提示するだけでよいとのことです。
設備に関する条件
次に確認すべき項目がお部屋の設備関連になります。
こちらもお部屋が要件に満たしていなければ改善できる項目は設備等の追加していく必要があります。
居室は25㎡以上
これも申請にあたり大前提となるので、まずご確認ください。この面積にはお風呂やトイレ、台所、クローゼットなどを含めて計算して大丈夫です。(ただし、ベランダは含まれません)
また、壁心で計算してよいので旅館業などで利用されている内法計算ではないので比較的緩い条件に設定されているといえます。これ以外に居室の条件として次の項目も定められていますが、一般的なお部屋の場合問題ない場合が多いかと思います。
- 一人当たり3.3㎡以上
- 天井は隙間なく平滑で清掃しやすいこと
- 他の居室や廊下との境は壁造り
自動火災報知器が必要
設備で次にハードルが高くなると思われるのが、この自動火災報知器の設定になります。
ふつうの家庭用の火災報知器ではなく大規模な集合住宅やホテルなどに設置されている「自動火災報知機」の設置が平米数に関係なく必要になります。
ちなみに自動火災報知器とはこんなやつです・・
自動火災報知設備(じどうかさいほうちせつび)は、感知器を用いて火災により発生する熱や煙を自動的に検知し、受信機、音響装置(ベル)を鳴動させて建物内に報知することにより、避難と初期消火活動を促す設備である。消防用設備、火災報知機の一種であり消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビル・重要文化財などの防火対象物に設置が義務付けられている。略称で「自火報(じかほう)設備」とも呼ばれ
[出典:Wikipedia]
この自動火災報知機は共同住宅であれば、500㎡以上の建物に設置を義務付けられています。500㎡以上の集合住宅の場合には設置されているかと思いますが、それ以下の建物の場合、新たに設置が必要となります。
自動火災報知機が設置されていないマンションの一室を賃貸で借りている場合、建物全体で設置する必要があるため、実質導入してもらうことはかなりハードルが高いかと思います。ただ、500㎡以下でも店舗などが入っている場合は自動火災報知機が設置されている場合もありますので、まずは管理会社か建物の所有者に確認が必要です。
戸建てで申請される場合は、自動火災報知機が設置されていないと思いますので、新設する必要があります。
消防法令の適合証明書の提出が必要
自動火災報知器以外にも消防法令に適合している必要があり、それを証明する証明書の提出が求められています。
消防法の規約は複雑に定められているため、諸葛の消防署に確認してくださいとのことでした。
自動火災報知器以外に求められている消防設備について記載させていただきます。
- 誘導等・・・全ての建物に必要
- 消火器・・・延べ面積150㎡以上
- 漏電火災報知器・・・木造ラスモルタルの建物で延べ面積150㎡以上
- 避難器具・・・2階以上で収容人数30人以上、直通階段が2つ以上ない3階以上の階で収容人数10人以上
上記は500㎡未満の比較的小さな建物の場合に求められる消防設備の抜粋となります。それより大きな建物になれば、スプリンクラーの設置など求められる設備もより厳しくなっていきます。
洗面所
洗面設備について細かく規定がありますが、一般的な洗面器があれば問題なさそうです。
- 不浸透性
- 耐熱性
- 清掃が容易
- 流水受槽式の構造
- 充分な大きさ(幅60cm、奥行50cm以上)
便所
- 悪臭を排除するための換気設備があること
浴室
浴室も一般的なユニットバスであれば問題ないかと思います。
- 底面は排水が容易にできるよう概ね100分の1.5以上の適用な勾配があること
- 隙間がなく清掃が容易に行る構造であること
- やけどを防止するため、放熱管や給配湯は直接体に接触しない設備であること
換気設備
- 外気に面して解放できる換気口を設けるなど空気環境を十分に確保する
- 給気口及び排気口は雨水や昆虫は入らないような設備であること
その他の設備に関する規定
主だった注意すべき項目について掲載させていただきましたが、それ以外にも細かい規定があります。すべてではないですが、それ以外の設備の規定について列挙しておきます。
- 出入り口及び窓に鍵がかかること
- 調理器具は電子レンジやコンロなど加熱できるもの
- 清掃用具は掃除機、雑巾、ゴミ箱があること
- カーテンやラグなどは防炎性能があること
- 布団や枕はカバーは取り外しや清掃が容易にできるもの
- 台所及び洗面設備は別に設けること
- 水道水その他飲用に適する水の供給
- 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備があること
運用にあたっての規定
営業日数は6泊7日以上 2泊3日以上から
10月25日、2泊3日になることが閣議決定いたしました。現時点での条例では6泊7日以上と定められていますので、現時点で申請される方は営業日数は6泊7日以上の条件にて申請する必要があります。
※補足:今後2泊3日に条例が変更になった場合は、許可を得ている事業者は届け出なども必要なく2泊3日から営業してもよくなるとのことです。
24時間体制の苦情窓口が必要
近隣からの苦情を連絡するための窓口の掲示もとめられています
- 24時間体制の苦情受付窓口の設置
- 苦情窓口の連絡先(責任者の氏名、電話番号等)を施設の出入り口に掲示
火災等の緊急時は24時間、外国語で対応できる体制が必要
- 警察、消防、救急の番号及び事業者への連絡方法を伝える(説明書への明記)
- 事業者において、緊急事態において24時間連絡可能とし、対応可能な外国語で対応できるようにしておく
- 防火、防災設備の使用方法を説明
- 外国語による図面、表示や、室内の図式による張り出し
- 居室内に電話設備がない場合は連絡可能は方法を伝える
ゴミの廃棄は産業廃棄物処理の認定事業者に委託
民泊で排出されるゴミは一般の市のゴミ収集では回収してくれません。一般廃棄物・産業廃棄物・再生資源廃棄物に分けて、産業廃棄物処理業者に回収してもらう必要があります。なお、申請時には産業廃棄物の業者名を届ける必要があります。
宿泊者との賃貸借契約書による契約が必要
宿泊者と予約を受ける場合に都度定期賃貸借契約書の取り交わしが必要となってきます。これは運用上、かなり手間がかかってしまう項目になります。また、各宿泊者毎に対応する言語の契約書を用意する必要があります。契約書のひな形は「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」で公開されていますが、かなりボリュームのある契約内容となっています・・。
契約書の取り交わしには宅建業の資格は必要ないということですが、それでも都度取り交わしするのは運用上かなりの負担となります。
実運用上紙媒体での契約書の取り交わしはかなり手間がかかるので、PDFで電子データでサインだけ宿泊者にしてもらうなどの方法でも対応可能なのかなど、確認していく必要があるかと思います。
鍵渡し・戻しは原則対面!?
鍵渡しについても対面でするのが望ましいと記載されています。また、チェックアウト時の鍵の戻しについてはカメラなどで鍵を戻していることを確認できれば対面でなくてもよいと言われていました。現地にキーボックスを設置して対面でなくても鍵の受け渡しはできそうですが、細かい条件付きにはなりそうです。
このあたりも確認でき次第追って追記させていただきます。
近隣住民への説明が必要
民泊を始めるにあたり周辺住民に対面での説明が義務付けられており、申請までに説明を終えている必要があります。
説明会を開いてこなかった対象の近隣住民へは直接訪問して説明してくださいと言われおりました。また、会えない場合は曜日や時間帯を変えて4回、5回と訪問してください・・とのこと。これらの活動は報告書としてまとめて申請時に提出する必要があります。このあたりは周辺に集合住宅が多い場合はかなりの件数になりそうです。
また、近隣住民の定義についてもしっかりと定められています。詳細は保健所にて確認していただく必要がありますが、簡単にいうと下記のようになります。
- 施設のある建物の全世帯
- 施設と隣接する建物の全世帯(外壁から20m以上離れている建物は対象外)
- 施設の敷地が隣接している道路、公園を挟んで隣接している建物の全世帯(敷地境界線から10m以内の建物)
Q&A
施設以外での鍵の受け渡しは可能か?
可能です。ただし鍵の受け渡しは対面が望ましいなどガイドラインがあります。
宿泊税はかかるのか?
今後1万円以上の宿泊は宿泊税が課税されるようになるとのこと
苦情窓口は24時間必要なの?
必要です。
パスポートの確認は全員必要?
全員必要になります。
日本人の利用は可能?
基本的には外国人が対象となるが日本人の利用も可能
建築確認済証の提出は必要か?
必要なし。口頭で住居用になっているか確認するのみ
年間営業日数(年間180営業日など)の規定はあるか?
なし
トイレや洗面の数は関係あるか?
なし
近隣住民の説明は「同意」が必要か?
同意までは必要なし。書面・体面での説明をすればOK
ホームページは申請時に新規作成する必要があるか?
既存のものがあればそれでOK。仲介サイト(Airbnb等)のURLでもOK
最大収容人数の制限はあるか?
規定なし
宅建業法の取得は必要か?
宅建業は関係なし
その他、私のほうで確認できたQ&A項目も随時更新していきますので、参考にしてください。
以上、特区民泊の申請に必要な要件や確認ポイントについてまとめさせていただきました。
ここで記載しているのは重要なポイントの抜粋となります。申請を検討する前段階の予備知識としてご確認いただければと思います。細かい点について様々な規約がありますので、申請する場合は個別相談会を保健所にて実施しているので相談していただくことをおすすめします。
また、私のほうで範囲でよければ回答させていただきますので、ご質問やご意見などあればコメント欄にメッセージいただければと思います。
この記事へのコメントはありません。